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打者のための物理学

トレーニング指導をしてる際に、同業者の中に理系の方が少ないのか?、つじつまが合わなくなると、気合を入れろ!などの精神論に逃げるヒトも少なくありません 笑。例えば、あのピッチャーは、重たい球を投げるとか、よく耳にしますが、ボールの企画は、規定されていますし、バットの企画も規定されていますので、精神論に邪魔されなければ、全て数字で計算出来るのです。

では、打つことについて考えてみましょう…



速い打球は、バットで遠くまで飛ばすことが出来ます。速い打球を打つためには、どうすれば良いでしょう?パワー増強・良いバットを選ぶ・球を真芯で捉える…等のキーワードが頭に浮かびますね。運動は、運動量と力積(mV-mv=Ft)で表わすことが出来ます。

m:野球の球の質量
V:打つ直前の投球の速度
v:打った直後の打球の速度
F:球に加わった力
t:球がバットに当たっていた時間

投球と打球は、反対方向に進みますので、もし目の前の投手が球速150kmで投げたとして、打者が150kmで打球を打ったならならば、vは、-150kmということになります。もし、打球が速ければ、等号の左側の値が大きくなります。つまり、速い打球を打つためには、等号の右側の部分の球に加わった力×球がバットに当たっていた時間を大きくすれば良いと言うことです。

その力を大きくするために、よく間違えるのが、筋量を増やす努力をさせてしまうこと。筋量が増えたから、力が大きくなると考えてしまうのでしょうね…巨人の星の大リーグボール養成ギブスの性かな…お気持ちは、わかるんだけれど、迷惑なシーンです 笑。ここでの力は、パワー。力×速度ですので、mgvになります。ですので、普段の練習において、筋力をつける練習が誤っていることに気づいて欲しいです。

また、球がバットに当たっていた時間を長くすることによって、速い打球を遠くへ飛ばせるようになります。例えば、バットに当たっている時間が0.1秒であったのを0.2秒に出来れば、打球の速度を倍に出来ます。

打撃の際に腰を使って打て!とのニュアンスでの指導は、このことなのですね。腕振りだけでバットを球にタッチすると、球がバットに当たっていた時間が短くなり、打球の速度が上がりません。腰を使って(に見える…)の動作を加えることで、バットに球を乗せて運ぶような状態に近づきますので、球がバットに当たっていた時間が長くなり、打球の速度が上がり、より遠くに球を飛ばせるようになります。


運動能力の個人差は、何処で見る?!

あのヒトは、あちらのヒトより運動能力がある…とよく表現されることがあります。そのヒトの運動能力は、一体、何処を見れば良いのでしょう?

生理学では、心肺機能が何処までの運動の強さに耐えられるか?を、そのヒトの運動能力として評価しています。もちろん、運動能力は、ヒトによって異なります。

無理せずに運動を行うためには、まず自分の運動能力の限界を知ることが大切です。



一般の成人男性では、1分間に体重辺り30~40mlの酸素を消費出来ます。

スポーツ選手は、1分間に体重辺り50~60mlの酸素を消費出来ます。学生時代に、マラソンの元選手だった瀬古さんは、70mlと言われていました。

熟年の男性では、1分間に体重辺り20mlの酸素を消費出来ます。

この限界を知らずに無理をしてしまうと、ジョギング中に倒れたりなどの運動中の突然死につながることもあります。せっかく健康のための有酸素性運動ですので、注意が必要ですね。


痛みのメカニズム

痛みがあると、そこが悪いってついつい思ってしまいますよね。痛みは、信号。あるのも困りますが、全くないのも困るものです。そこで、痛みのメカニズムについて、おさらいしてみましょう。

傷や熱、酸・アルカリの刺激を受けると細胞が傷つきます。傷ついた細胞からカリウムが放出されます。それがきっかけで、痛みを感じやすくするPGE2(プロスタグランジンE2)、PGI2(プロスタグランジンI2)、ロイコトリエンといったカラダの働きを調節する物質が作られます。

PGE2やPGI2は、痛みを増強させる物質、痛みに対する反応性を高める物質となります。PGE2、PGI2単独で痛みを生じさせるのではなく、痛みを感じやすくさせます。痛みのシグナルが発生したとしても、このシグナルの強さがある程度の閾値を越えていないと痛みを感じません。この閾値の違いが、痛みに対する我慢度の個人差かもしれません。



PGE2やPGI2が作られると、神経からは、サブスタンスPという痛み増強物質が放出されます。サブスタンスPによって、傷の痛みや腫れ、赤みなどが増強します。また、血液中の肥満細胞からはセロトニン、血小板からはヒスタミンといった、さらなる痛み物質が誘発します。このようなステージを経て、痛みセンサーは、ますます興奮し、痛みが拡大していきます。

拡大した痛み情報は、カラダの損傷や不具合を脳に伝え、その対策を立てるよう脳に促します。痛みがある時には、自然と安静を取り、体温を下げて炎症を抑えようとするのは、痛みを感じ取った脳が傷を癒すアクションを起こしているからなのです。

また、この痛みに関するホルモンを、血流を促進するなどで早く除去させることで、痛みを早く抑えることも出来ます。当社オリジナルのリセットバイクは、血流促進に非常に優れていて、1分間に60〜90回転で6〜8分で筋肉痛などの痛みをほぼ改善出来ます。


運動強度が物足りない⁉︎

運動強度が強くなると、糖質からのエネルギーに依存することが知られています。

ですので、運動強度が物足りないと言って簡単に強度の強い運動をすると脂肪よりも糖のエネルギーを利用することになります。



ヒトのカラダには、糖を利用する解糖系エンジン、脂肪を利用するミトコンドリアエンジンの2つのエンジンがあります。若い頃は、解糖系エンジンをしっかり使って運動していましたが、40歳を過ぎた頃から、解糖系エンジンは、お休みしがちになり、ミトコンドリアエンジンをよく使うようになります。

ですので、運動強度が物足りないからと言って働いてない解糖系エンジンを使おうとすると負のものがカラダに残るようになります。

また、カラダに蓄えられる糖質は、1%程度しかないので、常に食事からの摂取が必要となるのも事実ですが、食事による1日の摂取エネルギーが2500kcal程度の場合、食パン1枚と普通茶碗3.5杯くらい。

運動強度が物足りない…、やった感がしない…

なかなか痩せないのは、運動強度のせいじゃないっていうのをご理解いただけたでしょうか?


投手のための物理学

打者のための物理学でちょっと触れましたが、あのピッチャーは、重い球を投げる…のお話に触れてみましょう。

投手が投げる球には、重い球と軽い球があり、重い球は、バットに当たった時に、押し込むようになるから飛ばず、軽い球は、当たった瞬間に飛んで行くので遠くまで飛ぶと言う例え方でしょうね。昔、巨人の星という漫画で、星飛雄馬の球が速いのにバッターに通用しないのは、軽い球だから…と評価するシーンがあります。これを信じてしまってる指導者が多いのですね。年代的に仕方ないかもしれない 笑。

もし、バットを押し返す球が存在するならば、球がバットに当たっていた時間が長くなりますので、それは逆に遠くに飛ばされてしまうので、カラダを上手に使える打者に当たった投手は、要注意ですね。



投手は、速い球を投げらるに越したことはありませんが、速い球でなくても、いかに長い時間バットに球を当てさせないでおくか?、打者に体幹を上手く使って球をバットに乗せさせないような間合いなどの工夫することが大事です。

ボールの企画は、規定されていますし、バットの企画も規定されていますので、精神論に邪魔されなければ、意外と目標にすぐ到達出来ると思います。しかし、選手生活は、非常に短いものですし、トレーニングでカラダを変化させるにも時間がかかりますので、トレーニングプランにもこのような含みを持たせてプログラミングしてあげると、効果も上がりやすく、非常に楽しく練習に取り組めると思うのですね。選手も頭使わないとダメだと思います。

打者のための物理学についても一言書いてみたいと思います。


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