真面目にストレッチしたのに怪我するメカニズムについて
| 運動
可動域を広げるのが目的で行うストレッチ…実は、競技前のストレッチがパフォーマンスを低下させると先日のTVでも放送されていました。
3~10分の静的ストレッチングの前後で筋力を測定すると、最大挙上負荷、等速性筋力などの動的筋力(McLellan ら、2000;Cramer ら、2004など)、等尺性筋力および筋力発揮速度(Nelson ら、2000など)がいずれも低下してしまうことが示されています。
筋力低下は、最大で約30%にも及び、その効果はストレッチング終了後45分間ほど持続するそうです。
また、筋力低下と平行して、筋の電気的活動も低下することから(Fowles ら、2000)、この筋力低下は、筋線維の動員能力の低下によることが示唆されます。
ここでの筋力低下のメカニズム…
筋には、筋紡錘という受容器があり、筋の長さを検知していますが、筋紡錘が伸張されると、感覚信号が脊髄や脳の中枢神経系に送られます。このとき、脊髄中にある運動神経(α-運動神経)の活動を増強し、伸張された筋の活動を高めるように作用します。これを伸張反射といいます。
筋が伸張されると、これに抗して大きな筋力を意識しなくとも瞬時に発揮できるような仕組みとなっています(やまおく体操は、ここを自分のカラダを重りとして活用することで、神経と筋の調和が整うよう応用された体操です)。
一方、筋紡錘の内部にも、錘内線維と呼ばれる筋線維があり、運動神経による支配を受けています(γ-運動神経)。錘内線維は、筋紡錘の感度を調節していて、γ-運動神経が活動すると筋紡錘の感度が上がります。
最大筋力を発揮するときには、αとγの両方の運動神経が活動し、筋紡錘からの感覚信号によってさらに筋力発揮が増強される仕組みがはたらきます。これをγ-α共役と呼びます。
静的ストレッチングにより、筋紡錘の感度が低下し(脱感作)、その結果、筋の緊張は低減するものの、γ-α共役がうまくはたらかなくなって筋力も低下する可能性があるのです。
僕は、競技前にストレッチングすると、カラダが逆に重く感じたりするので、あまり真面目に取り組んでいませんでした。
カラダが柔らかいのに越したことはありませんが、可動域を広げても、骨や関節を動かすための筋がうまく作用しなければ、競技成績に逆に悪い影響を与えてしまうという持論がありましたので、先生やコーチに嫌がられましたが、持論を通していたのを思い出します。
競技前のストレッチがパフォーマンスを低下させる…特に筋力・パワー系競技のアスリートにとって要注意でもありますね。