運動神経の良し悪しが、必要なのは、スポーツや楽器演奏といった高度なスキルが求められる場面ばかりではありません。グラつかづに立ったり、初めの一歩を歩みだして、まっすぐ歩くといった何気ない動きの背後にも、小脳と大脳皮質との連携プレーが、活躍しています。
姿勢維持で、大切な機能の1つに、予測的姿勢調節があります。例えば、机に置いたペットボトルを右手で取って、立ったまま飲む動作について考えてみて下さい。片腕の重さは、約4〜5kg。右腕を前に差し出すだけでも重心の位置は、前になるはずです。
ペットボトルを持つと、更に重心が前に振られます。それでも倒れないのは、腕を伸ばす前に、重心が前へ移動しても平気なように体幹や下半身の筋肉を適度に制御・抑制するからです。これが予測姿勢調節であり、その一連の命令も小脳が深く関わっています。
スポーツでは、ペットボトルを手で取るよりも、遥かに複雑な動作を組み合わせていますので、予測姿勢調節は、一層重要になります。フィードフォワード(予測制御)では、ボールを投げたり、打ったり、蹴ったりする動作の中では、手足が、力を発揮する直前に、体幹が、ガチッと安定します。
これが、フィードフォワード(予測制御)の典型的な例です。体幹が安定してから、手足等への末端へ、鞭をしならせるように、力(パワー:筋力×スピード)を伝えています。